2018/07/19の記事

高温等に伴い農作物の技術情報(普及センター発行)

 京都府中丹東農業改良普及センター

京都府中丹西農業改良普及センター

高温等に伴う農作物の技術対策

気象庁から「西日本と東日本における7月下旬の高温について」が(平成30年7月13日に発表され、7月26日頃まで高温が長く続く恐れがあるとのことです。

ついては、以下の事項を参考に、農作物の適切な管理と高温時の体調管理について参考にしていただきますようお願いします。

 

1 水稲

(1)出穂期は生育期間を通じて最も水を必要とする時期で、この時期の水不足は稔実を著しく不良にするため、湛水管理に努める。

(2)登熟期の高温は、粒の充実が悪くなり、乳白粒など未熟粒が多発するほか、収穫時の殻粒水分が低下して胴割れ米が発生するため、土が湿った状態(飽水状態)になるような水管理を心掛ける。特に地温が上昇しているため、水温が低い夜間の入水や掛け流しにより地温の低下に努める。

(3)早期落水は胴割れ米の発生を助長するため、収穫の1週間前までは間断かんがいを継続する。

(4)ほ場をかんがいする際には、畦から漏水していないか点検する。

(5)地域全体で計画的な用水管理を心掛け、ほ場が水不足にならないように注意する。

 

2 大豆(紫ずきん含む)

(1)大豆及び紫ずきんは、7月下旬から8月上旬に開花期を迎える。開花期以降、着莢や子実肥大に水分を必要とするため、土が乾燥しないよう、かん水に努める。開花期から莢伸長期にかけての水不足は、落花・落莢を増長させ、稔実莢数や一莢粒数の減少につながり、減収を招く。

(2)水管理の目安として簡易土壌水分計を活用するなど、かん水時期を判断する。

(3)ただし、開花期に急激に大量の水を与えると根を傷めて落花することが多いため、長期のかん水を避け、夕方にうね間かん水を一定間隔で実施し土壌水分量の急激な変化を避ける。

(4)地域の用水が不足する場合は、1うねか2うね空けてかん水する。

大きな区画(30a以上)のほ場では、数日に分けてかん水してもよい。

(5)開花期以降、子実の肥大に伴ってカメムシ類や子実害虫の被害が増えるため、若莢期から10日間隔で2~3回防除する。また、この間の乾燥天候によりハダニ類やハスモンヨトウの発生も増加するため、ほ場をよく観察し、発生を認めたら早期防除に努める。

 

 

 

3 小豆

(1)7月中下旬に、は種適期となる小豆については、深播きにしたり、は種後適宜かん水を実施したりするなど、発芽・苗立の確保を促し、初期生育の向上に努める。かん水の方法は明きょを活用したり、うね間に水を走らせたりするなど実情に応じて効率的に行う。

 

4 野菜・花き

(1)早朝にかん水を行うように努める。

(2)マルチや敷ワラを行い、水の蒸発を抑える。この場合でも、計画的にかん水し、マルチ

内の土が乾燥しないように注意する。

(3)施設では、遮光資材等により遮光を行う。

(4)害虫、特にハダニ類、スリップス類等が多発しやすいので、発生初期の防除に努

める。

 

【品目別の管理】

(1)軟弱野菜(ミズナ・ミブナなど)

・強光時には遮光資材等でハウス全体を被覆し、ハウス内の気温を下げる。

(2)ナス・トウガラシ類

・かん水を計画的に行う。ハウスでは少量多かん水が効果的である。

(3)キュウリ・トマト

・遮光、遮熱資材等の利用により、気温の低下を図るとともに、日焼け果の発生防止に努める。

(4)コギク

・マルチや敷きワラを行い、土壌の乾燥を防ぐ。乾燥による下葉の枯れ上がりが激しい

場合は、かん水する。また、害虫の発生初期に防除する。

(5)花壇苗類

・パンジー等これから播種する品目については、遮光資材等でハウス全体を被覆し、ハ

ウス内の気温を下げるよう努めるとともに、害虫の早期防除を徹底する。

 

5 果樹

(1)かん水は、早めから計画的に行う。スプリンクラーや散水チューブを使用して、成木園では20mm(20t/10a)かん水する。無降雨が7日以上続く場合は、繰り返しかん水する。この時、地下に浸透させることが重要であるため、できるだけ時間をかけてかん水する。また、水量を節約するには、早朝又は夕方にかん水する。

(2)水分の競合を避けるため、園内の草を刈り取り、株元にマルチを行う。

(3)園内をよく観察し、ハダニ類・カメムシ類の防除を行う。なお、間もなく収穫を迎える樹種では、農薬の「収穫前日数」に十分注意する。

(4)土壌水分は表面ほど変化が激しくなるため、普段から計画的に土壌の深耕及び有機物を施用し、地下部の保水力を高めるとともに、根群の発達を促す。

 

6 茶

(1)干ばつ害を軽減するため、うね閒や株元の敷草等により、土壌水分の保持に努め

る。特に、幼木園は干ばつ害を受けやすいため、気温の下がる夕方にかん水チューブ等でかん水する。

(2)被覆施設のあるところでは、寒冷紗(遮光率60~70%)、よしず等を筋掛けする。被

覆することにより、露天に比べて株面付近の温度が3~7℃低下し、葉焼けを軽減することができる。また、被覆期間は、9月中旬までを限度とし、平年並に気温が下がった曇りの日に被覆を除去する。

(2)気温が高い時期にはカンザワハダニ、チャノミドリヒメヨコバイ、チャノキイロアザミウマなどの害虫の被害が大きくなりやすいため、発生を確認し、的確に防除する。

(別途発行する茶業技術情報を参考にしてください)

 

7 作業者の熱中症を防ぐ対策

〈作業環境面〉

(1)日除けや通風をよくする設備を設置し、作業中は適宜散水する。

(2)スポーツドリンク(濃い場合は2倍程度に薄める)等でこまめに水分と塩分を補給するとともに、身体を適度に冷やすことができる氷、冷たいおしぼり等を備える。

(3)作業中の温湿度の変化がわかるよう、温度計、湿度計等を設置する。

(4)日陰などの涼しい場所に休憩場所を確保する。

〈作業面〉

(1)十分な休憩時間や作業休止時間を確保する。

(2)作業服は透湿性、通気性の良いものを、帽子は通気性の良いものを着用する。

(3)作業がつらいときは無理をせずに日陰の涼しいところで休憩し、水分を補給して、身体を冷やす。

〈健康面〉

(1)健康診断結果などにより、健康状態をあらかじめ把握しておく。

(2)作業開始前や、作業中に作業者間で健康状態を観察する。

〈救急措置〉

(1)近くの病院や診療所の場所を確認しておく。

(2)熱中症は、早期の措置が大切。

少しでも異常が見られたら下記の手当を行う。

・涼しいところで安静にする。

・水やスポーツドリンク等をとる。

・体温が高いときは、裸体に近い状態にし、冷水をかけながら扇風機等で風をあてる。    また、首、脇の下、足の付け根など太い血管のある部分を氷等で冷やす。

・回復しない場合及び症状が重い場合等は、速やかに医師の手当を受ける。

 

以上を参考にしていただき、農作物と体調の管理には十分注意してください。