【コラム】なくそう食品ロス ☆冷蔵庫内での食品ロスを減らすには

【コラム】なくそう食品ロス ☆冷蔵庫内での食品ロスを減らすには

食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美

     

 冷蔵庫の国内普及率は、1975年、99%に達しました。あえて持たない暮らしを選ぶ人もいますが、一家に1台ある場合が多い家電製品です。
 
 冷蔵庫の目的は、食品を長く保存して無駄にしないようにすることですが、中で食品を腐らせてしまうことも少なくないのではないでしょうか。何を隠そう私も、何度も失敗しています。

 食文化研究家の魚柄仁之助(うおつかじんのすけ)さんは著書『冷蔵庫で食品を腐らす日本人 日本の食文化激変の50年史』(朝日新書)で「永久凍土と化した冷凍庫」と述べ、「本来、衛生的かつ安全に食べられるように保存するための道具である冷凍冷蔵庫のはずなのだが、まさにブラックボックス化」していると嘆いています。
 
 食品業界では在庫管理が大切で「先入れ先出し」と呼ばれます。先に作ったものを先に出荷する、店頭の棚に並べる。ところが、家の冷蔵庫になると、これが徹底できない。だから、古いものが冷凍庫の奥で化石化して食品ロスとなってしまうのです。これを防ぐためには在庫管理をしやすくすること。どの棚にどんな食べ物があるのか分かりやすくし、冷蔵庫の中を循環させ、「便秘」にしないことです。
 
 どの棚も、奥が見えるようにする。冷蔵庫の容量の5~7割程度に収める。そうすれば、在庫管理もしやすく、食材が冷えやすくなり、日持ちも良くなります。何より気持ちがすっきりします。備蓄しておく場合は、常温保存できる食品にすると良いでしょう。
 
 魚柄さんの著書の後書きには「京王井の頭線の24分」と題し、車内で出会った老夫婦の話が書かれています。食を楽しむとはどういうことか。おいしいものを食べるより「おいしく食べる」ことが大切だといろんな方が語っていますが、そのことをしみじみ考えさせてくれます。読んでいただきたい逸話です。

 
食品ロス問題ジャーナリスト
井出 留美(いで るみ)
 株式会社office3.11代表取締役。
 博士(栄養学/女子栄養大学大学院)
 修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。
 『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著書多数。
 
 ※本コラムは【JA広報通信】からの引用です。